近年、増加傾向にある梅毒。厚生労働省の調査では、2018年には1,775件もの梅毒患者の報告があり、他人事ではなくなってきています。「もしかしたら自分も……」と不安になっている人もいるのではないでしょうか?
梅毒には特徴的な症状があります。症状に気づいてすぐに病院で処置を受ければ、梅毒は治療することができます。
この記事では梅毒の症状を紹介、感染経路や検査、治療についても解説します。
梅毒とは?
梅毒とは「梅毒トレポネーマ」という細菌に感染することで起こる性病です。感染してしばらくすると、楊梅(ヤマモモ)の花のように赤い発疹が起こることから梅毒と呼ばれています。
感染すると、一定の期間を経て悪化していき、放置していると、命に関わる事態に発展する病気です。2015年ごろから、梅毒の感染者数は増加傾向にあります。
梅毒の症状
梅毒の症状は、感染から経過した時間によって、第1期~第4期と、4段階に分類されます。第1期と第2期は「早期梅毒」第3期と第4期は「晩期梅毒」と呼ばれます。
ここでは、梅毒の症状を段階ごとに解説していきます。
第1期(感染から3週間~3ヵ月)
梅毒の第1期の特徴的な症状は、直径1cmほどの赤いしこりです。このしこりは「初期硬結(しょきこうけつ)」と呼ばれ、性器や肛門、口などにできます。また、初期硬結は「硬性下疳(こうせいげかん)」という固いイボに発展する場合があります。
初期硬結や硬性下疳は、痛みがほとんどありません。そのため、症状が出ていることに気づかず、見過ごされてしまうことがあります。
陰茎に出たしこりは目立つため、男性は症状に気づきやすいといわれています。一方、女性の場合、子宮頚部(しきゅうけいぶ)といった目に見えない部位にまで症状があらわれるため、男性に比べて症状に気づきにくいのです。
第1期の症状は数週間で消え、しばらくすると第2期の症状を引き起こします。
第2期(感染から3ヶ月~3年)
梅毒の第2期は、第1期と比べて目立った症状があらわれるようになります。また、様々な症状があらわれるのも特徴です。
梅毒第2期の症状
- ● バラ疹
- ● 梅毒性丘疹(ばいどくせいきゅうしん)
- ● 扁平(へんぺい)コンジローマ
- ● 梅毒性乾癬(ばいどくせいかんせん)
- ● 風邪のような症状
梅毒の第2期で特徴的な症状のひとつが、全身にできる「バラ疹」です。バラ疹は、バラの花びらを散らしたいような、赤い、1~2cmの湿疹です。バラ疹には痛みがなく、数週間で消えます。
バラ疹が消えてからおよそ12週間で、「梅毒性丘疹」が全身にあらわれます。梅毒性丘疹は白っぽく、硬性下疳ように固いのが特徴です。バラ疹が出ずに、いきなり梅毒性丘疹があらわれることもあります。
「扁平コンジローマ」は、梅毒性丘疹が、性器や肛門周辺、脇の下など、湿った部位に発生したものです。平べったい形をしており、軽い痛みや痒みを生じます。
「梅毒性乾癬」は、手のひらや足の裏など、皮膚の厚い部位にできる梅毒性丘疹です。皮膚が盛り上がり、ひっかくと皮がポロポロと剥がれ落ちます。
他にも、全身のリンパの腫れや発熱、倦怠感、関節痛といった、風邪のような症状もあらわれることがあります。
第3期(感染から3年~10年)
第2期の時点で治療を受けなかった場合、第3期に発展します。第3期では、皮膚表面だけでなく、体内にまで症状が起こります。
第3期で特徴的な症状が「ゴム腫」と呼ばれる、弾力を持った腫瘍です。ゴム腫は皮膚上だけでなく、骨や筋肉、臓器にも発生し、全身の組織を破壊していきます。その結果、骨の刺すような痛みや、呼吸困難が起こったり、冠動脈が狭くなったりします。
第4期(感染から10年~)
第4期にまで発展すると、心臓血管系や中枢神経が侵され、深刻な症状が次々とあらわれます。
第4期の症状は、大動脈炎や大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)、痴呆や言語障害などです。梅毒がここまで進行すると、日常生活もまともに送れなくなり、やがて死に至ります。
梅毒の感染経路
梅毒の主な感染経路は性行為です。粘膜同士の接触によって感染します。挿入行為だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスも原因となります。
感染者の血液の輸血や、感染者の臓器を移植することで感染することもあります。ただし、輸血や臓器提供の際には検査が行われるため、このような経路で感染することはめったにありません。
梅毒にかかった女性が妊娠した場合、胎盤を通して、梅毒が胎児に伝染する恐れがあります。
梅毒の検査
梅毒の検査が受けられるのは、保健所や病院です。病院は、男性なら泌尿器科、女性なら産婦人科を受診しましょう。
保健所では、無料・匿名で検査を受けることができます。一方、病院に比べて、検査日や時間が限られています。
病院では、場合によっては保険が適用されず、費用が高額になることがあります。一方、いつでも受診が可能です。保険が適用される場合の検査費は2,000円~4,000円、保険が適用されない場合は5,000円~10,000円が相場です。
検査では、血液を採取し、梅毒の抗体が作られているかどうかを確認します。
梅毒に感染してから4週間経たないと、検査しても抗体は確認できません。そのため、感染の有無を確認するには、第1期の症状が出てから1週間以上が経過してから検査を受ける必要があります。
検査キット
検査キットを使えば、自宅で検査ができます。
付属の器具を使って、自分で採血を行い、それを専門機関に郵送するだけで検査は終了です。検査結果は、最短1~2日で郵送で送られてきます。
検査キットの価格は3,000円~5,000円が相場です。Amazonや楽天といった通販サイトや、検査キットを扱っている研究機関で購入することが可能です。
手軽に検査を行える一方、精度では医療機関の検査に劣ります。どうしても病院に行くのが怖い、忙しくてすぐに病院に行けない、といった人は、検査キットを使ってみるのもよいでしょう。
梅毒の治療
梅毒の治療には「ペニシリン」や「ミノサイクリン」という抗生物質が使われます。抗生物質の服用期間は、第1期なら2週間~4週間、第2期なら4週間~8週間です。第3期、第4期まで進行した場合、点滴や注射が使われます。
薬を使い始めてから数時間~数日以内に、発熱、筋肉痛、リンパ節の腫れなどが起こることがあります。これは、薬の作用で梅毒トレポネーマが一気に死滅し、菌の体内の毒素が放出されることが原因です。この症状は、およそ24時間でおさまります。
まとめ
梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌が原因で起こる性病です。
第1期、第2期では、全身に赤いしこりや、バラの花びらのような湿疹が起こるのが特長です。第3期からは臓器や神経にまで症状が起こり、第4期まで発展すると、日常生活もままならなくなり、やがて死に至ります。
梅毒の感染経路は性行為です。まれに、輸血や臓器移植によって感染することもあります。また、妊婦が感染していた場合、胎児に伝染します。
梅毒の検査は保健所や泌尿器科、産婦人科で受けることができます。検査では採血が行われ、梅毒の抗体が存在するか確認されます。検査キットを使えば、自宅にいながら検査が可能です。
梅毒の治療には抗生物質が使われます。抗生物質は、症状の進行度によって、4週間から8週間と、長期に渡って飲み続けます。
梅毒は放置していると命に関わるだけでなく、周囲に感染を広げてしまいます。症状が出たら病院で診察を受け、適切な処置を受けましょう。